試練 (Challenge)
1 米国東海岸企業の伝統的な日本支社から転職し、当時、スカイロケットと呼ばれていると聞いた米国西海岸IT企業の日本支社へ。入社時社員番号は70番台、そして3年で支社だけで1500名の大きさになった。爆発的に組織拡大し、日々新入社員が増え、常に机をもって社内移動。激烈な日々だったが、大いなるユーモアがあり、ビジネスの発展に夢があり、ヒーロー達がいる会社での熱にうかされたような3年だった。
2 シリコンバレーの本社にも数回出張したが、空港から自分でレンタカーを借り、慣れない右車線と全く風景の変わらない広大な高速道路を眠気と戦いながら本社まで運転し、モーテル泊。荒っぽい事この上ないながらも、皆明るく4人での創業からこのような巨大企業になるんだと驚く。常に、会社の方針方向性を議論し、自らのビジネス成功モデルを破壊し、組織を破壊し、変革する事が最大の生存方法と徹底して経験させられた。
3 常に仕事モード。いや、好きでなければここまで集中できないだろうと思わせる位にシリコンバレーの熱い競合状態の中でも、それぞれのビジネスを尊重し各企業の集積体が今後のIT産業をリードしていくという仲間意識もあった。
4 数年後、Sunは、競合企業に吸収されたが、30年たった今でも、その技術や理想、考え方はIT産業の中心にありオープンネットワーク、JAVA(R), SolarisサーバーなどはIT技術者の基礎知識として知見の継続が全世界で為されている。恐るべき生命力を熱い企業体の情熱が生み出しそして後継者たちを育てている事に今更ながら驚きを持ち、真のアメリカン・ベンチャー魂を体験した事の幸運を感じる。
5 シリコンバレーにはIT企業も多数あったが、それを支援する大中のVC (ベンチャーキャピタル)PE (プライベートエクィティ)という資金の供給者でありビジネスの支援者たちがいるのを本社出張の際に、話を聞かされそれらの存在の大きさを感じたのも後年の投資業界への転身のきっかけのひとつでもあった。IT企業とVC/PEとの人的交流やそれぞれが増殖し、集散と分化をしていくダイナミズム、エコシステムを見た経験も貴重であった。
物語(Story):
1 Sun Microsystemsは、4人の学生起業家の会社。Sunは、スタンフォード大学ネットワーク(Stanford University Network)の略という事を知る人は少ないかも。コンピューター言語のUNIXベースで作ったワークステーションは、当初からネットワーク(連携)を前提として開発され大ヒットした。次にサーバー開発/製造販売も大当たり、そしてJAVA(R)のソフトウェアも大ヒット。わずか3年だったが、ビジネスが大当たりし続ける熱狂を体験できた。
2 起業者/経営者のチームワークも素晴らしく、米国流のベンチャー企業の経営手法を直接体験できた。CEOの激しいコメントの横で、UNIXの神様と呼ばれビル・ゲーツと並び称されたビル・ジョイを筆頭とする開発部隊のアイディアと商品戦略。激しい職場でありながら、まさに、出社するのにワクワクする期待感は、経営面で豊富な知の体験をさせて貰った。
3 前例がないからやる、朝令暮改(朝の組織変更発表が社内で反対運動があると夕方には本当に組織変更をやめる)に遠慮なし、面白いのならやる、という分化。各人には意見を求めそして尊重し、どうすべきか、常に経営戦略を部署に関係なく皆で想像していったように思う。 数冊の本にもなったが、経営戦略の実践的な世界の「戦場」でありビジネスに勝ち続けた。
4 Sunには大いなるユーモアがあり、社内キャンペーンではすぐTシャツを作って皆で着ていたり、役員のポルシェを駐車場で解体し、役員室の中で組み上げてそれを見た役員が激怒するどころか大喜びで写真をみんなで撮ったという伝説や枚挙にいとまない。数冊の本にも散りばめられている。
5 スピード、スピード、そしてスピード。何をやるにしてもまずは動いて、走りながら修正すればそれの方がうまく行く。躊躇したり立ち止まったら、競合が先に動いているぞという方針も重要だった。どうしても慎重に考えてしまう日本人流の重要事項の判断への対峙方法とは真逆であった。考える、しかし、やってみなければ分からないはずだから、動く。それがリーダーシップの基本だというのを徹底し実践させられた。 明日目が覚めた時に、君が思っていたアイディアが他社でビジネスになっていたら悔しいだろ?世間では、そのアイディアは、彼らだとしか認めてくれないからね。という言葉の重さを感じる。ベンチャー魂はこれに尽きるかも。
6 多くのSun出身者が、この企業文化をもって各企業に転身していった。日本でも経営に関する米国出版本で人事関連、経営指南書関連の本を見るとどこかには、Sun出身者の参画を見るのは、あの企業での実践現場で鍛えられた知見が、技術的テクノロジーとは別に生命体として残っているのではないだろうか。シリコンバレー本社で見かけていた静かな技術責任役員(当時)CTOであったエリック・シュミットがその後Google社で展開した人事戦略は、私にとってはSunの文化の更なる発展に思える。
7 IT業界を支えるのは、そこに従事している多くの起業家、経営陣、実務家だけでなく、シリコンバレーを拠点としてそれぞれの経営陣のアドバイザーあるいは経営指南役として経営陣の一角を締めていたVC (ベンチャーキャピタル)や PE (プライベートエクィティ)にいるキャピタリストの支援も大きい事を見聞きした経験も大きい。IT企業群の中のプレイヤーも変わっていくが、VC/PE企業群も人的な変容が多く、この両方が織りなすエコシステムが米国の産業を強烈にリードするものと思った。
学び(Takeaway):
成功を収めつつ自己変革を起こす勇気、判断もそこそこにまずは動き、そして動きながら修正していけば、改善はより実践的に実行できるはず
